司法書士・専門家の先生へ:パーキンソン病/レビー小体型で「注意・幻視・日内変動」が起きることがある——“分かっているのに揺れる”場面の見立てと、面談条件の整え方
遺言作成・家族信託等の面談で、本人がある時は要点を理解して話せるのに、別のタイミングでは
- 反応が遅い/注意が続かない
- こちらの説明に乗ってこない
- 話が飛ぶ、見当違いが混じる
- 「見える」「いる」など、周囲にはないものの話が出る(幻視)
といった“揺れ”が出ることがあります。
このとき周囲は「認知症が急に進んだのでは」「せん妄では」「能力がないのでは」と捉えがちです。
しかし臨床では、**パーキンソン病(PD)やレビー小体型認知症(DLB)**の文脈で、
- 注意の波(認知のゆらぎ)
- 視覚性の幻視
- 日内変動(時間帯で崩れる)
- 薬の効き(ON/OFF)や副作用
が絡んで、面談の成立条件が崩れることがあります。
この記事では、司法書士の先生方が実務で困りやすいポイントを、能力論ではなく“条件設計”の観点で一般論として整理します。
担当医師について(背景)
私は回復期病棟で高齢者診療・認知症診療に従事し、ご本人・ご家族を交えた意思決定支援に携わっています。
臨床では「能力」そのものよりも、注意・覚醒・疲労・睡眠・薬・環境で意思表示が揺れることを前提に、面談条件を組み立てます。
1) ざっくり:PD/DLBで起きやすい“面談を揺らす要素”
※診断の解説が目的ではなく、実務の見立て用の一般論です。
パーキンソン病(PD)で起きやすいこと
- 動作が遅い(寡動)、表情が乏しい(仮面様顔貌)→ 理解がないように見える
- ON/OFFやwearing-off(薬が切れて崩れる)→ 時間帯で反応が変わる
- 眠気、立ちくらみ、疲労 → 注意が落ちる
- (一部で)幻視や錯覚、妄想的解釈が混じることがある(薬剤影響も含む)
レビー小体型認知症(DLB)で特徴的になりやすいこと
- 注意・覚醒の変動(波):しっかりしている時間と、乗ってこない時間の差が大きい
- 具体的な幻視:人や動物など「はっきり見える」形で語られることがある
- これらが「性格」や「気分」ではなく、病態として起きることがある
重要なのは、こうした症状があるから即「手続不能」ではなく、条件で崩れたり立ち上がったりする点です。
2) 実務で厄介なのは「内容」より、“プロセスが疑われやすい形”になりやすいこと
PD/DLBが絡む場面で、後から疑いが育ちやすい典型は次です。
- 本人の反応が薄い(表情・声量・動作)→「理解していないのでは」
- 時間帯で波がある→「その日はたまたま悪かったのでは」
- 幻視の話題が出る→「現実検討ができていないのでは」
- 家族が補足・代弁しがち→「誘導では」
つまり、争点は病名というより **「その場の条件で、本人の理解・選好が成立していたか」**に降りてきます。
3) 医師の視点:幻視があっても“全体が無効”とは限らないが、条件設計は必要
幻視が出ていると、家族も専門職も一気に不安になります。
ただ、臨床では
- 幻視があっても、他の領域は保たれることがある
- 逆に、疲労・睡眠不足・感染・脱水・薬の調整などで急に悪化することがある
という「波」を前提に扱います。
実務上は、次の一点が重要です。
“幻視がある/ない”の議論ではなく、当日の意思確認が成立しやすい条件を作れているか。
(※急な悪化が強い場合は、せん妄等の鑑別が必要になることがあり、医療側の評価が優先されます。ここでは一般論に留めます。)
4) 先生向け:PD/DLBが疑われる案件の「面談条件」チェック(一般論)
鑑定ではなく、紛争予防としての実務の整え方です。
(1) “時間帯”と“長さ”を先に決める
- 反応が出やすい時間帯(午前など)を優先
- 30分×複数回、休憩前提(疲労で落ちやすい)
- 1回で結論を取りに行かない(波がある前提)
(2) 薬の「効いている時間」を邪魔しない(できれば情報だけ押さえる)
- PDは薬の効きで動き・注意が変わることがあります
- 服薬直後の眠気、切れ際の崩れ等もあり得ます
→ 医療判断は主治医領域ですが、少なくとも**「時間で変わる」前提**を面談設計に入れるのが安全です。
(3) 伝達条件(聞こえ・見え・環境)を“過剰なくらい”整える
DLBは注意が揺れやすく、環境負荷で崩れやすいことがあります。
- 静かな部屋、同席は最小限
- 1テーマずつ短く説明
- 重要点は紙で見える化(大きい字、箇条書き)
(4) 確認は「分かった?」ではなく、短い言い換えで
- 先生が要点を短く要約
- 本人に「あなたの言葉で言うと?」で確認(短文でOK)
- 選択肢は出してもよいが、“誘導”に見えない並べ方が大事(ここは案件ごとに設計)
(5) 家族の代弁は“情報提供”に留め、本人の訂正ルートを確保
- 家族が話す → 先生が短く要約 → 本人に確認
- 本人が否定・訂正できる方法(首振り、指差し、短い選択肢)を事前に作る
→ 「家族が全部決めた」構図を避けるだけで、後からの疑いが減ります。
(6) 最後に効くのは「プロセスが説明できる」こと
後から問われるのは、立派な文章よりも
- どの条件で(時間帯・同席・環境)
- どう確認したか(本人の言葉の出方、言い換え確認)
という短い説明材料です。
5) ケース例(匿名の典型):午前は成立、夕方に崩れ、「その日」を争点にされる
※個別事案ではなく、よくある状況の一般化です。
【状況】
午前は会話が成立するが、夕方に注意が落ち、幻視の話題が混じる。家族は不安になり、代弁が増える。
【後から起きること】
別の相続人が「当日は崩れていた」「誘導だ」と主張し、争点が当日の条件・同席・確認方法へ移る。
【ポイント】
波がある案件ほど、**“いつ・誰が・どう確認したか”**の設計が弱点になりやすい。
当室が担えること(司法書士の先生向け)
当室では診断・治療や鑑定、法律判断は行いません。
紛争予防の観点から、先生方の実務に接続しやすい形で **「条件整理」と「面談整理(情報整理・文書化)」**を行います。
- 注意の波・幻視が疑われる場面での 面談条件の設計(時間帯、区切り、同席、環境)
- 本人の意思が表れやすい 伝達条件の整理(説明の区切り、見える化、確認の型)
- 後から説明可能な形での 面談整理(情報整理・文書化)
まずは「連携のご挨拶(20分・無料)」から(先生向け)
「このケース、能力の問題として扱うべきか、条件設計で安定化する余地があるか」など、初動の見立てだけでも実務は動きやすくなります。
先生向けにオンライン20分(無料)でご相談の入口をご用意しています。
司法書士・専門家の方:お問い合わせ(司法書士・専門家の方)
ご相談(対面/オンライン)
当方の対応は以下のとおりです。
- 対面:京都・大阪近辺を中心に対応
- オンライン:全国対応(内容により)
「まだ遺言内容が固まっていない」「何が不安なのか整理できていない」という段階でも大丈夫です。状況を伺ったうえで、進め方をご提案します。
- 家族の方:お問い合わせ(家族)
- 司法書士・専門家の方:お問い合わせ(司法書士・専門家の方)
注意
本記事は一般的な情報提供であり、医療行為(診断・治療)や法律上の個別助言を行うものではありません。個別の状況により適切な対応は変わります。
著者情報
回復期病棟で高齢者・認知症診療に従事する医師。生活に直結する意思決定支援の経験を踏まえ、相続・遺言の場面で「意思が表れる条件整理」と「面談整理(紛争予防のための情報整理)」を行う。著者情報はこちら
