家族の方へ:遺言の話をする“その日”が重要です—睡眠・痛み・薬・不安で意思表示は弱く見える

遺言や家族信託など大切な話を進めたいのに、本人が

  • 「任せる」「どうでもいい」
  • 「今日は疲れた」
  • 「よく分からない」

となって話が進まないことがあります。家族としては不安になり、「もう判断できないのでは」と考えがちです。

ただ臨床では、意思表示は“能力”だけでなく、**その日の状態(睡眠・痛み・薬・不安・疲労)**で大きく揺れます。
つまり、同じ人でも「話し合いに向く日」と「向かない日」があります。ここを無視して進めると、後から面倒になりやすいのです。

※本稿は一般的な情報提供です。医療上の診断・治療、法律上の個別助言や手続き代行を行うものではありません。個別の法律判断は司法書士・弁護士へ、急な意識変化などが疑われる場合は医療機関へご相談ください。


担当医師について(背景)

私は回復期病棟で高齢者診療・認知症診療に従事し、ご本人・ご家族を交えた意思決定支援に携わっています。
臨床では、意思決定は「能力」だけでなく、体調・睡眠・痛み・薬・不安といった“条件”で揺れることを前提に関わります。


1) 「任せる」が増えるのは、能力の問題とは限らない

次のような状態では、考えること自体が負担になり、「任せる」に収束しやすくなります。

  • 睡眠不足:注意が落ち、比較検討ができない
  • 痛み:集中が続かず、早く終わらせたくなる
  • 薬の影響:眠気・ふらつきで「うん」が増えることがある
  • 不安:決めるのが怖く、責任回避として「任せる」になる

ここで家族が「じゃあ同意だね」と進めると、後から「怖くて適当に返事しただけ」と言われやすくなります。


2) ケース例(匿名の典型):夕方の面談で「うん」が増え、翌日覆る

【状況(典型)】
夕方、本人は疲れて眠そう。痛みもあり、話題が遺言になると不安が強くなる。家族は「同意が取れた」と思って進めた。

【後から起きやすい面倒】

  • 本人が翌日「そんな話してない」と言う
  • きょうだいが「誘導だ」と疑う
  • 家族の関係が悪化し、手続が止まる

【ポイント】
“能力の白黒”よりも、「その日の条件で、無理に結論を出した」ことが火種になります。


3) 家族ができる「その日を選ぶ」工夫(超実務)

① 時間帯を変える(最優先)

  • 夕方〜夜は避ける
  • 可能なら午前中に短く

② 1回で決めない

  • 30分で区切る
  • 「今日は選択肢を並べるだけ」回を作る

③ “サイン”を見て、今日はやめる勇気を持つ

  • 眠気が強い
  • いらだちが強い
  • 返事が単語だけになる
  • 話題を避ける
    このときは、決めない方が結果的に早いです。

当室が担えること(家族向け)

当室では診断や治療ではなく、紛争予防の観点から 「意思が表れやすい条件整理」と「面談整理(情報整理・文書化)」 を行います。

  • その日の状態(睡眠・痛み・薬・不安)を含めた条件整理
  • 本人の負担が小さい進め方の設計(時間帯、区切り、同席設計)
  • 後から説明可能な形での整理・文書化(面談整理)

まずは書面での事前スクリーニング(おすすめ)

「まず論点と条件だけ短く整理したい」という場合は、書面完結の事前スクリーニングをご利用いただけます。
(納品:A4 1〜2枚PDF/標準5営業日)

家族の方:お問い合わせ(家族)

ご相談(対面/オンライン)

当方の対応は以下のとおりです。

  • 対面:京都・大阪近辺を中心に対応
  • オンライン:全国対応(内容により)

「まだ遺言内容が固まっていない」「何が不安なのか整理できていない」という段階でも大丈夫です。状況を伺ったうえで、進め方をご提案します。


注意

本記事は一般的な情報提供であり、医療行為(診断・治療)や法律上の個別助言を行うものではありません。個別の状況により適切な対応は変わります。

著者情報

回復期病棟で高齢者・認知症診療に従事する医師。生活に直結する意思決定支援の経験を踏まえ、相続・遺言の場面で「意思が表れる条件整理」と「面談整理(紛争予防のための情報整理)」を行う。著者情報はこちら

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です