家族信託は「内容が複雑」になりやすい—意思確認でつまずくポイントと紛争予防の段取り
家族信託は、うまく設計できると将来の管理・承継をスムーズにしやすい一方で、遺言よりも説明事項が増え、**本人の理解・納得の確認(意思能力/意思決定能力)**が難しくなることがあります。
特に、意思能力に不安がある場合や、本人が疲れやすい場合には、「制度としては良いのに、説明が難しくて前に進まない」「後から“分かっていなかった”と言われないか不安」という悩みが起きがちです。
著者:回復期病棟で高齢者診療・認知症診療に従事する医師。意思決定支援の臨床経験をもとに、相続・遺言の紛争予防のための事前整理を行っています。(運営者情報はこちら)
まず結論:家族信託は「理解の確認」を設計しないと揉めやすい
家族信託で争点になりやすいのは、ざっくり言うと次の2つです。
- 本人が何を承諾したのか(誰が何を管理し、どこまでできるのか)
- なぜその形にしたのか(他の選択肢との比較、本人の納得)
遺言よりも登場人物・役割・条件が増える分、本人の理解を“本人の言葉で”確認する設計が重要になります。
家族信託で「意思確認が難しくなる」典型ポイント
医師の視点も踏まえて、意思確認が詰まりやすいところを一般語で整理します。
1) 役割が増えて混ざる(誰が何をする?)
委託者・受託者・受益者…といった言葉を覚えること自体が目的ではありませんが、
本人の頭の中で「誰が何を決めるのか」が混ざると、納得の確認が浅くなります。
2) “いま”と“将来”の話が混線する
「今の管理」「将来の承継」「途中で何が起きたらどうする」など、時間軸が増えるほど混乱しやすいです。
3) 条件分岐(もし〜なら)が理解の負担になる
「もし受託者ができなくなったら」「もし施設入所になったら」など、条件が重なると比較検討が難しくなります。
4) 本人が疲れると「早く終わらせたい」方向に寄る
長い説明や確認が続くと、本人が疲れて「うん、いいよ」と合わせてしまい、後から争点になりやすくなります。
ケース例(匿名の典型):制度は良いが説明が長くて本人が混乱
状況(典型)
80代。日常会話はできるが、長い説明が続くと話題が混ざりやすい。家族は「将来のために家族信託が良い」と考え、司法書士と検討を開始。
面談では本人も前向きだが、途中から疲れが出て「誰が管理するんだっけ?」「結局、私の希望はどうなるの?」と不安が強くなり、同席家族が説明を代わる場面が増えていった。
起きやすい問題(争点)
- 「本人が理解していないのに周囲が進めた」と見られやすい
- 本人の言葉より同席者の説明が前に出て、誘導を疑われやすい
- 後から家族間で「本当に納得していたのか」の解釈が割れる
紛争予防のために効く工夫(一般的提案)
- 説明を分割:1回で完結させず、短い面談を複数回に分ける
- 図解1枚に落とす:登場人物と役割を“1枚の図”で固定する
- 本人の言葉で確認:Yes/Noで終わらせず、要点を本人に言い換えてもらう
- 同席者の役割分離:本人確認パートは同席者の介入を減らし、質問は後半に回す
- 疲労を前提に設計:休憩・時間帯の工夫、説明の優先順位づけをする
「説明の設計」で失敗しないためのチェックリスト
家族信託の意思確認を進める前に、次を一度点検するとミスマッチが減ります。
本人側(負担の見積もり)
- 長い話を聞くと疲れやすい/集中が続きにくい日がある
- 「もし〜なら」が続くと混乱しやすい
- 聞こえにくさ・読みづらさがあり、確認方法の工夫が必要
同席・場の設計
- 本人が自分の言葉で話せる雰囲気がある
- 同席者が“説明を代わる”状況になりやすくないか
- 「本人確認の時間」と「家族の質問の時間」を分けられるか
進め方(段取り)
- 図解(1枚)と要点(3つ)に落としてから説明できるか
- 1回で完結させず、分割前提にできるか
- 代替案(遺言・任意後見など)も比較の上で納得を作れているか
医師が入ると何が変わるか(家族信託で特に効く点)
家族信託は「制度説明の巧さ」だけではなく、本人の意思が表れる条件設計が重要です。医師の視点が入ると、たとえば次が整理しやすくなります。
- 本人が理解しやすい説明の粒度(短く区切る/復唱確認/時間配分)
- 疲れやすさ・集中の続き方を踏まえた面談設計(時間帯、休憩、分割)
- 本人の言葉が出る進行(同席圧・誘導のリスクを下げる)
- 後から説明できる形で「何をどう確認したか」を言語化する(紛争予防)
当室では、面談内容をもとに 「意思確認サマリー(紛争予防のための面談整理)」 をPDFで作成・納品します(ご家族向け+士業向けの2部構成)。
※診断書作成や法的判断・結果保証を行うものではありません。
まずは「連携のご挨拶(20分・無料)」から(先生向け)
このケース、いま何を優先して整えるべきか——初動の見立てだけでも、その後の進め方が大きく変わります。
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司法書士・専門家の方:お問い合わせ(司法書士・専門家の方)
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当方の対応は以下のとおりです。
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- 家族の方:お問い合わせ(家族)
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注意
本記事は一般的な情報提供であり、医療行為(診断・治療)や法律上の個別助言を行うものではありません。個別の状況により適切な対応は変わります。
著者情報
回復期病棟で高齢者・認知症診療に従事する医師。生活に直結する意思決定支援の経験を踏まえ、相続・遺言の場面で「意思が表れる条件整理」と「面談整理(紛争予防のための情報整理)」を行う。著者情報はこちら
