日によって調子が違うとき、何を先に整えるか—遺言・家族信託の前に「条件」を決める

遺言や家族信託の準備を進めたいのに、
「今日はしっかりしているけど、別の日はぼんやりする」
「午前は話せるのに、午後は疲れてしまう」
といった“日による揺れ”があると、家族は不安になります。

この不安の本質は、単に体調の問題ではなく、後から 「その日に本当に理解できていたのか」「本人の自由な意思だったのか」 を争われないか、という点にあります。
この記事では、個別の結論に誘導せず、日によって調子が違うときに 何を先に整えるべきか を一般論として整理します。

※本記事は一般的な情報提供です。医療上の診断・治療、法律上の個別助言や手続き代行を行うものではありません。具体的な手続きは主治医・弁護士・司法書士等へご相談ください。


医師の視点:意思決定は「能力」だけでなく「条件」で揺れる

私は回復期病棟で高齢者診療・認知症診療に従事し、ご本人とご家族を交えて「自宅に帰るか、施設に入所するか」など生活に直結する意思決定の支援も行っています。
その経験から強く感じるのは、意思決定は本人の能力そのものだけでなく、体調・疲労・睡眠、服薬、環境、説明の仕方、同席者といった“意思が表れる条件”で大きく変わるということです。

相続・遺言の場面でも、後から争点になりやすいのは結論より、その結論に至るプロセス(当日の条件)が妥当だったかです。


先に整えるべきは「3つの条件」

日による揺れがあるとき、家族がまず整えると良いのは、次の3つです。
(細かな質問項目や記録テンプレは個別設計の領域になるため、本記事では触れません。)

1) タイミング(いつ話すか)

  • 本人が比較的はっきりする 時間帯 を選ぶ
  • 長丁場にしない(途中休憩を前提にする)
  • 「今日は疲れている」と感じた日は、無理に進めない選択肢を残す

ポイント:良い日に合わせるのは“ズル”ではなく、本人が力を発揮できる条件を整えるという意味で合理的です。

2) 伝達条件(どう伝えるか)

  • 聞こえ:補聴器、話す速度、静かな場所
  • 見え方:眼鏡、資料の文字サイズ、要点を短く
  • 説明は区切る:長い説明→うなずき、にならないようにする

ポイント:能力の問題に見えて、実は「伝達の問題」だった、ということは少なくありません。

3) 同席設計(誰がいるか)

  • 人数を増やしすぎない(最初は少人数が無難)
  • 本人が言いにくい相手がいる場合は、同席の仕方を工夫する
  • 「誰が進行するか」「誰が記録するか」を決めておく

ポイント:同席者が増えるほど場の圧が上がり、本人の言葉が出にくくなることがあります。


“揺れ”があるときに起きやすい落とし穴

日によって調子が違う状況で、揉めやすくなる典型は次のパターンです。

  • 「今日は元気だから」と急いで結論まで決めにいく
  • 進行が焦って、確認が浅いまま「分かったことにする」
  • 同席者が多くなり、本人が“任せる”しか言えなくなる
  • 会議後に共有が拡散し、「聞いてない」「誘導だ」と対立する

ケース例(匿名の典型):良い日に進めたのに、後から不安が残る

以下は個別事案ではなく、よくある状況を一般化したものです。

【ケース例】午前は明瞭、午後に疲れる方の意思確認

状況(典型)
午前は会話が成立するが、午後は眠気や疲れが強い。家族はスケジュール都合で午後に集まり、長時間の話し合いになった。

起きやすい問題(争点)
後から「疲れていて理解が浅かったのでは」「本人の自由な意思だったのか」と疑われる余地が残る。

条件を整えると変わる点(一般論)

  • 本人が力を発揮しやすい時間帯に合わせ、短時間で区切れる
  • 伝達条件を整え、要点が本人の言葉として確認しやすくなる
  • 同席設計を工夫し、本人の言葉が出やすい場になりやすい

相談した方が良いサイン

  • 日によって受け答えの差が大きい
  • 眠気が強い日がある/集中が続かない
  • 難聴や視力低下があり、確認が噛み合いにくい
  • 家族間に不信があり、後から争点化しそう
  • 同席者が多いと本人が黙る/「任せる」が増える

当サービスでできること

当室では、結論に誘導するのではなく、紛争予防の観点から次を整理します。
(※診断・治療、法律上の個別助言は行いません。)

  • “揺れ”の要因の整理(体調変動/睡眠・服薬/伝達条件/同席者 等)
  • 本人の意思が表れやすい面談条件の設計(タイミング・伝達・同席)
  • 後から争点になりやすい点の洗い出しと、専門職と進めるための情報整理(面談整理)

まずは「連携のご挨拶(20分・無料)」から(先生向け)

このケース、いま何を優先して整えるべきか——初動の見立てだけでも、その後の進め方が大きく変わります。
先生向けにオンライン20分(無料)でご相談の入口をご用意しています。

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ご相談(対面/オンライン)

当方の対応は以下のとおりです。

  • 対面:京都・大阪近辺を中心に対応
  • オンライン:全国対応(内容により)

「まだ遺言内容が固まっていない」「何が不安なのか整理できていない」という段階でも大丈夫です。状況を伺ったうえで、進め方をご提案します。


注意

本記事は一般的な情報提供であり、医療行為(診断・治療)や法律上の個別助言を行うものではありません。個別の状況により適切な対応は変わります。

著者情報

回復期病棟で高齢者・認知症診療に従事する医師。生活に直結する意思決定支援の経験を踏まえ、相続・遺言の場面で「意思が表れる条件整理」と「面談整理(紛争予防のための情報整理)」を行う。著者情報はこちら

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