同席者が多いほど揉める理由—家族会議の設計(相続・遺言の前に)

相続や遺言、家族信託の話し合いで「とりあえず家族全員で集まろう」となることがあります。
しかし実務では、同席者が増えるほど “合意” ではなく “対立の材料” が増え、後から「聞いていない」「誘導された」と争点化しやすくなることが少なくありません。

この記事では、個別の結論に誘導するのではなく、**家族会議が揉めにくくなるための設計(一般論)**を整理します。

※本記事は一般的な情報提供です。医療上の診断・治療、法律上の個別助言や手続き代行を行うものではありません。具体的な手続きは弁護士・司法書士等へご相談ください。


なぜ「人数が多いほど揉めやすい」のか(よくある4つの構造)

1) 目的が分裂する(“整理”と“決着”が混ざる)

同席者が多いと、

  • 「今日は希望を整理したい人」
  • 「今日決め切りたい人」
  • 「そもそも反対したい人」
    が同じ場に入りやすく、会議の目的が崩れます。目的が崩れると、発言は「確認」ではなく「主張合戦」に寄ります。

2) “圧”が生まれ、本人の言葉が出にくくなる

親(本人)がいる前で、子ども同士が議論し始めると、本人は言いにくくなります。
後から見たときに「本人の意思」というより「場の力学」で決まったように見えてしまうのが問題です。

3) 情報が増えるほど、誤解も増える

人数が増えると、過去の出来事・介護の負担・金銭の援助など「論点」が雪だるま式に増えます。
結果として、相続や遺言の話が、過去の精算の話にすり替わりやすくなります。

4) 記録と共有が難しくなり、「聞いてない」が生まれる

全員が同席しても、理解の深さは人によって違います。
会議後に「自分はそう理解していない」と言い始め、**“同席したのに合意がない”**状態になりやすいのが落とし穴です。


医師の視点:家族会議は「能力」より「条件」で荒れる

私は回復期病棟で高齢者診療・認知症診療に従事し、ご本人とご家族を交えて「自宅に帰るか、施設に入所するか」など生活に直結する意思決定の支援も行っています。
その経験から強く感じるのは、意思決定は本人の能力だけでなく、同席者・雰囲気・疲労・説明の仕方といった “条件” で大きく揺れるということです。

相続・遺言の場面でも、後から争点になりやすいのは「結論」より、その結論に至るプロセスが妥当だったかです。人数が多いほど、そのプロセスの妥当性が崩れやすくなります。


ケース例(匿名の典型):同席者が増えて揉めるパターン

以下は個別事案ではなく、よくある状況を一般化したものです。

【ケース例1】善意で全員集合→本人が「任せる」しか言えない

状況(典型)
子ども全員が集まり、誰かが進行。本人は疲れ、反対意見が出ると黙り込み「任せる」と言う。

起きやすい問題(争点)
後から「本人の意思が確認できていない」「圧があったのでは」と疑われやすい。
また、“任せる”が「同意」と誤解されやすい。

揉めにくくするために重要な考え方(一般論)

  • 本人の意思を確認する回と、家族の調整をする回を分ける
  • 本人の負担を前提に、時間と人数を絞る
  • その場で決め切らない(持ち帰りの設計)

【ケース例2】一人が録音・議事録→「編集された」と不信になる

状況(典型)
会議後に代表者が要約を共有。別の家族が「そんな言い方ではなかった」と反発。

起きやすい問題(争点)
「聞いてない」「歪められた」という対立が起き、内容以前に信頼が崩れる。

揉めにくくするために重要な考え方(一般論)

  • 共有ルール(誰に、どの粒度で、いつ共有するか)を先に決める
  • 合意点/未合意点/保留点を分ける(“決まっていない”を明確にする)

家族会議の設計:最初に決めるべき「3つの枠」

ここから先は詳細に踏み込むほど個別設計が必要になりますが、一般論として、最低限この3つを先に固定すると荒れにくくなります。

  1. 目的の枠:今日は「整理」か「決定」か
  2. 同席の枠:誰が同席し、誰は同席しないか(人数は少なめが原則)
  3. 共有の枠:会議後に何を、誰に、どう共有するか(全文共有は慎重に)

※この3つが曖昧なまま集まると、議論はほぼ確実に拡散します。


早めに“設計”を入れた方がいいサイン(一般的な目安)

  • きょうだいの関係が微妙/不信がある
  • 代表者(強い人)が一方的に進めがち
  • 本人が「任せる」「どうでもいい」が増えている
  • 会議が長くなると本人が疲れて反応が鈍る
  • 会議後の共有で必ず揉める(LINEが荒れる)

当サービスでできること(一般論)

「集まるほど荒れる気がする」「話し合いが始められない」という段階でも大丈夫です。状況を伺い、進め方をご提案します。
(※診断・治療、法律上の個別助言は行いません。)

  • 同席者・進行・共有の「条件整理」(揉めにくい枠組みづくり)
  • 本人の言葉が出やすい面談条件の設計(負担・疲労・伝達条件等を含む)
  • 後から争点になりやすい点の洗い出しと、専門職と進めるための情報整理(面談整理)

ご相談(対面/オンライン)

当方の対応は以下のとおりです。

  • 対面:京都・大阪近辺を中心に対応
  • オンライン:全国対応(内容により)

「まだ遺言内容が固まっていない」「何が不安なのか整理できていない」という段階でも大丈夫です。状況を伺ったうえで、進め方をご提案します。


注意

本記事は一般的な情報提供であり、医療行為(診断・治療)や法律上の個別助言を行うものではありません。個別の状況により適切な対応は変わります。

著者情報

回復期病棟で高齢者・認知症診療に従事する医師。生活に直結する意思決定支援の経験を踏まえ、相続・遺言の場面で「意思が表れる条件整理」と「面談整理(紛争予防のための情報整理)」を行う。著者情報はこちら

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です