司法書士・専門家の先生へ:「日によって揺れる」の正体—認知症だけではない“可逆的要因”という視点
遺言・家族信託等の相談で、「普段は会話できるのに、日によって受け答えが違う」「午前は大丈夫だが午後に崩れる」といった“揺れ”が問題になることがあります。
このとき、ご家族は「認知症が進んだのでは」と捉えがちですが、臨床では **認知症の有無とは別に、一時的に認知機能や注意が落ちる要因(可逆的要因)**が重なることが少なくありません。
本稿は、法律実務の判断ではなく、医療現場で実際に起きている“揺れの原因”を言語化するための、医師側の一般論メモです。
※本稿は一般的な情報提供です。医療上の診断・治療、法律上の個別助言や手続き代行は行いません。個別の法的評価は先生のご判断領域です。
1) 「揺れ」は“病名”より“状態”で起きることがある
高齢者の意思表示が不安定になる原因は、認知症そのものだけではありません。
同じ本人でも、体調や環境で 理解・注意・比較検討の深さが変わり、結果として「任せる」「うん」「いいよ」が増えることがあります。
重要なのは、「できる/できない」の二択ではなく、**何が揺らしているか(揺れの駆動因子)**を見立てることです。
2) 医療現場でよく見る“可逆的要因”の例(一般論)
A. 脱水・栄養不足
水分摂取が落ちると、注意・集中が急に落ちることがあります。夏場や利尿薬使用、食欲低下があると起きやすい印象です。
B. 感染・発熱(軽い風邪でも)
高齢者は「微熱・軽い感染」でも、頭が回らなくなったり、普段よりぼんやりしたりすることがあります。
C. 痛み・不眠・疲労
痛みや眠れない状態は、理解や比較検討を浅くします。
長い面談で疲れてくると、**“早く終わらせたい同意”**が出やすくなります。
D. 便秘・尿閉など身体の不快
見落とされがちですが、便秘や尿のトラブルでも落ち着かず、会話の質が崩れることがあります。
E. 薬の影響(眠気・ふらつき・注意低下)
鎮痛薬、睡眠薬、抗不安薬、抗ヒスタミン薬などで、眠気や注意低下が出ることがあります。
ご家族が「今日は調子が悪い」と感じる日の背景に、薬や飲み忘れ/飲み過ぎが絡むケースもあります。
F. 環境変化(入院・転居・人の出入り)
場所が変わる、人が多い、緊張する――こうした環境要因で、普段より言葉が出なくなることがあります。
3) “せん妄”という現象:昨日は普通、今日は別人のよう
臨床で特に誤解が起きやすいのが せん妄です(一般概念として)。
特徴は「日内変動・急な悪化・注意の低下」で、入院、手術後、感染、脱水、睡眠不足などで起きやすいとされます。
せん妄が疑わしい状況だと、本人の受け答えが「できる日/できない日」に割れやすく、周囲が混乱しやすいです。
このとき重要なのは、結論を急ぐより前に “状態が揺れている可能性”を言語化し、条件を整えることです。
4) 司法書士の先生にとっての実利:争点は“医学用語”より“条件の説明可能性”
紛争予防の観点では、最終的に問われやすいのは「病名」ではなく、
その時点で本人の意思が表れやすい条件だったか/揺らす要因をどう扱ったかという説明可能性だと感じます(一般論)。
医療側の視点としては、次のような情報があると「揺れ」の説明がしやすくなります。
- 本人の良い時間帯(午前が良い、食後は眠い等)
- 眠気・痛み・睡眠の状況
- 直近の体調変化(風邪気味、食欲低下等)
- 伝達条件(難聴・視力、補聴器や眼鏡の使用)
※この先の具体的な質問設計や記録テンプレは個別性が高いため、本稿では扱いません。
5) 当室の立ち位置(医師として提供できる価値)
私は回復期病棟で高齢者診療・認知症診療に従事し、退院先の選択など生活に直結する意思決定支援にも日常的に関わっています。
その経験を踏まえ、当室では診断や治療ではなく、紛争予防の観点から **「意思が表れる条件整理」と「面談整理(情報整理)」**を行います(一般論)。
- “揺れ”の背景(体調・睡眠・痛み・薬・伝達・環境)を整理
- 本人が力を発揮しやすい条件(時間帯、説明の区切り、同席)を設計
- 後から争点になりやすい点を、先生が次工程に使える形で言語化
まずは「連携のご挨拶(20分・無料)」から(先生向け)
このケース、いま何を優先して整えるべきか——初動の見立てだけでも、その後の進め方が大きく変わります。
先生向けにオンライン20分(無料)でご相談の入口をご用意しています。
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ご相談(対面/オンライン)
当方の対応は以下のとおりです。
- 対面:京都・大阪近辺を中心に対応
- オンライン:全国対応(内容により)
「まだ遺言内容が固まっていない」「何が不安なのか整理できていない」という段階でも大丈夫です。状況を伺ったうえで、進め方をご提案します。
- 家族の方:お問い合わせ(家族)
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注意
本記事は一般的な情報提供であり、医療行為(診断・治療)や法律上の個別助言を行うものではありません。個別の状況により適切な対応は変わります。
著者情報
回復期病棟で高齢者・認知症診療に従事する医師。生活に直結する意思決定支援の経験を踏まえ、相続・遺言の場面で「意思が表れる条件整理」と「面談整理(紛争予防のための情報整理)」を行う。著者情報はこちら
