司法書士・専門家の先生へ:「薬と眠気」が意思表示を弱くすることがある—睡眠薬・抗不安薬・鎮痛薬などの影響
遺言作成・家族信託等のご相談で、面談の場は成立しているように見える一方、
「うなずきが多い」「任せるが増える」「集中が続かない」「途中からぼんやりする」
といった状態が見られることがあります。
このとき、ご家族は「認知症が進んだのでは」と捉えがちですが、臨床では 薬剤の影響(眠気・注意低下)が重なって、意思表示が弱く見える場面が少なくありません。
本稿は、法律実務の解説ではなく、司法書士の先生方が案件初動で状況整理をする際に役立つよう、医師側の視点を一般論としてまとめたものです。
※本稿は一般的な情報提供です。医療上の診断・治療、法律上の個別助言や手続き代行を行うものではありません。個別事案の法的評価は先生のご判断領域です。
担当医師について(背景)
私は回復期病棟で高齢者診療・認知症診療に従事し、ご本人・ご家族を交えた退院支援の意思決定(自宅/施設等)を日常的に支援しています。
臨床では、意思決定は「能力」だけでなく 体調・睡眠・痛み・薬・伝達条件・同席者の影響といった“条件”で大きく揺れることを前提に関わります。
薬の影響は「能力の低下」に見えやすい
高齢者では、薬の影響が次のような形で現れやすい印象があります。
- 眠気が強い/目が開きにくい
- 注意が続かない(話が途中で抜ける)
- 反応が遅い、返答が短い
- 「分かった」「いいよ」「任せる」で早く終わらせたがる
- 夕方〜夜に崩れる(睡眠不足と薬が絡むことも)
この状態は「理解できない」よりも先に、“意思が表れにくい条件”になっている可能性があります。
影響が出やすい場面
薬剤名を決め打ちするのは個別性が高いので本稿では控えますが、一般論として次のような状況で、眠気や注意低下が問題になりやすいことがあります。
1) 不眠・不安があり、睡眠に関する薬が調整されている
「眠れるようになった」一方で、日中に眠気が強いことがあります。
2) 痛み(整形外科疾患、がん性疼痛など)があり、鎮痛薬が増減している
痛みが強いと集中できず、薬が効くと眠気が出る——どちらも意思表示を弱くし得ます。
3) 複数の薬が重なっている(いわゆるポリファーマシー)
薬の組み合わせで、本人も家族も「何が原因か」分かりにくくなります。
4) 服薬のタイミングと面談時間帯が合っていない
「飲んだ直後」や「昼食後」など、眠気が出やすい時間帯に面談が当たると、会話が浅くなりやすいことがあります。
ケース例(匿名の典型):薬の影響で“同意っぽく見える”が増える
以下は個別事案ではなく、よくある状況を一般化したものです。
【ケース例】「任せる」が増え、後から“理解”が争点化しそうになる
状況(典型)
高齢の本人。日中の眠気が目立つ時期があり、面談では「任せる」「いいよ」が増える。家族は「同意が取れた」と解釈し、手続きを進めたくなる。
起きやすい問題(争点)
後日、別の家族から「理解していなかったのでは」「誘導だったのでは」と疑義が出る。
本人も「そんなつもりではなかった」と言い出し、プロセスが問われる。
医療側の観点で整理しやすい点(一般論)
- 眠気・集中低下が「いつ・どの条件で」強いか(時間帯、食後、服薬タイミング等)
- “能力そのもの”ではなく、“条件が整っていない”可能性
- 条件を整えることで、本人の言葉(理由づけ)が出やすくなる場合がある
※本稿では、具体の質問セットや記録テンプレ等は個別性が高いため扱いません。
先生方の実務上の実利:病名より「条件の説明可能性」
紛争予防の観点では、後から問われやすいのは「病名」よりも、
当日の状態(眠気・注意)と条件(時間帯・同席・説明方法)を踏まえて、どう確認したかの説明可能性だと感じます。
薬の影響が疑われる場面では、少なくとも
- 面談条件(時間帯、長さ、休憩)
- 伝達条件(説明の区切り、本人の言葉を引き出す工夫)
- 同席条件(圧がかかりにくい設計)
といった“条件整理”が、争点化リスクの低減に寄与し得ます。
当室が担えること
当室では診断や治療ではなく、紛争予防の観点から **「意思が表れやすい条件整理」と「面談所見の整理・文書化」**を行います。
- 眠気・注意低下など“揺れ”の要因整理(体調・睡眠・痛み・服薬・伝達条件・同席圧 等)
- 本人の意思が表れやすい面談条件の設計(時間帯、区切り、同席設計、共有ルール 等)
- 後日の説明可能性を担保する形での文書化(面談整理)
※個別の法的判断・手続設計は先生の領域です。当室は「条件整理」「面談整理」に主眼を置きます。
まずは「連携のご挨拶(20分・無料)」から(先生向け)
このケース、いま何を優先して整えるべきか——初動の見立てだけでも、その後の進め方が大きく変わります。
先生向けにオンライン20分(無料)でご相談の入口をご用意しています。
司法書士・専門家の方:お問い合わせ(司法書士・専門家の方)
ご相談(対面/オンライン)
当方の対応は以下のとおりです。
- 対面:京都・大阪近辺を中心に対応
- オンライン:全国対応(内容により)
「まだ遺言内容が固まっていない」「何が不安なのか整理できていない」という段階でも大丈夫です。状況を伺ったうえで、進め方をご提案します。
- 家族の方:お問い合わせ(家族)
- 司法書士・専門家の方:お問い合わせ(司法書士・専門家の方)
注意
本記事は一般的な情報提供であり、医療行為(診断・治療)や法律上の個別助言を行うものではありません。個別の状況により適切な対応は変わります。
著者情報
回復期病棟で高齢者・認知症診療に従事する医師。生活に直結する意思決定支援の経験を踏まえ、相続・遺言の場面で「意思が表れる条件整理」と「面談整理(紛争予防のための情報整理)」を行う。著者情報はこちら
