司法書士・専門家の先生へ:うつ・不安で「どうでもいい/任せる」が増えることがある—気分症状と意思表示

遺言作成・家族信託等のご相談で、面談の場は成立しているように見える一方、本人が
「どうでもいい」「任せる」「好きにして」
と繰り返し、理由づけや優先順位が引き出しにくいことがあります。

このとき、周囲は「意思能力(意思決定能力)がないのでは」と捉えがちですが、臨床では うつ・不安などの気分症状が重なって、意思表示が弱く(あるいは投げやりに)見える場面も少なくありません。
本稿は法律実務の解説ではなく、司法書士の先生方が案件初動で状況整理をする際に役立つよう、医師側の視点を一般論としてまとめたものです。

※本稿は一般的な情報提供です。医療上の診断・治療、法律上の個別助言や手続き代行を行うものではありません。個別事案の法的評価は先生のご判断領域です。


担当医師について(背景)

私は回復期病棟で高齢者診療・認知症診療に従事し、ご本人・ご家族を交えた退院支援の意思決定(自宅/施設等)を日常的に支援しています。
臨床では、意思決定は「能力」だけでなく 体調・疲労・睡眠、痛み、薬、伝達条件、同席者の影響といった“条件”で揺れることを前提に関わります。気分症状(抑うつ・不安)も、意思表示に影響し得る重要な要因の一つです。


「任せる/どうでもいい」は“意思の欠如”とは限らない

気分症状が強いと、次のような形で意思表示が弱くなることがあります。

  • 意欲が落ちる:考えること自体が負担で、投げやりになる
  • 不安が強い:決めるのが怖く、責任回避として「任せる」になる
  • 罪悪感・遠慮:家族に迷惑をかけたくない気持ちが先に出る
  • 集中が続かない:理解はできても、比較検討が深まらない
  • 悲観的:「どうせ自分はもう…」という感覚が混ざる

つまり、表面上は「意思がない」ように見えても、背景に 気分の問題として整理できる要素がある場合があります。


高齢者では“気分症状”が見えにくいことがある

高齢者のうつ・不安は、必ずしも「落ち込んでいる」とは表現されず、

  • 不眠
  • 食欲低下
  • 体のだるさ
  • いらだち
  • 「何もしたくない」
  • 「もう十分生きた」

のように、身体症状や言葉の端々で現れることもあります。
その結果、「認知症」「性格」「わがまま」と誤解され、面談の条件が整わないまま進んでしまうと、後から争点化しやすい形になります。


ケース例(匿名の典型):気分症状で“同意っぽく見える”が増える

以下は個別事案ではなく、よくある状況を一般化したものです。

【ケース例】不安が強く、意思表示が「任せる」に収束する

状況(典型)
本人は会話は成立するが、相続・遺言の話題になると不安が強くなり、「任せる」「どうでもいい」で終わりがち。家族は「同意が取れた」と解釈して進めたくなる。

起きやすい問題(争点)
後から「本人は理解していなかったのでは」「誘導・圧があったのでは」と疑義が出る。
本人自身も「怖くて考えられなかっただけ」と言い出し、プロセスが問われる。

医療側の観点で整理しやすい点(一般論)

  • 気分症状(不眠・不安・意欲低下)が意思表示を弱くしていないか
  • 「能力」ではなく「負担」「恐怖」「遠慮」で言葉が止まっていないか
  • 条件(時間帯・同席・説明の区切り)を整えることで、本人の言葉が出やすくなる余地

※具体の質問セット・進行台本・記録テンプレは個別性が高いため本稿では扱いません。


先生方の実務上の実利:病名より「条件とプロセスの説明可能性」

紛争予防の観点では、後から問われやすいのは「うつの診断があるか」よりも、
当日の状態(不安・意欲低下の影響)と条件(同席・時間帯・負担)を踏まえて、どう確認したかの説明可能性だと感じます。

気分症状が疑われる場面では、少なくとも

  • 本人の負担が小さい時間帯・短時間で区切る
  • 本人の言葉(理由づけ)が出る進行
  • 同席圧を下げる設計
    といった“条件整理”が、争点化リスクの低減に寄与し得ます。

当室が担えること

当室では診断や治療ではなく、紛争予防の観点から **「意思が表れやすい条件整理」と「面談所見の整理・文書化」**を行います。

  • 「任せる/どうでもいい」の背景にある要因整理(不眠・不安・意欲低下、体調、薬、伝達条件、同席圧 等)
  • 本人の意思が表れやすい面談条件の設計(時間帯、区切り、同席設計、共有ルール 等)
  • 後日の説明可能性を担保する形での文書化(面談整理)

※個別の法的判断・手続設計は先生の領域です。当室は「条件整理」「面談整理」に主眼を置きます。


まずは「連携のご挨拶(20分・無料)」から(先生向け)

このケース、いま何を優先して整えるべきか——初動の見立てだけでも、その後の進め方が大きく変わります。
先生向けにオンライン20分(無料)でご相談の入口をご用意しています。

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ご相談(対面/オンライン)

当方の対応は以下のとおりです。

  • 対面:京都・大阪近辺を中心に対応
  • オンライン:全国対応(内容により)

「まだ遺言内容が固まっていない」「何が不安なのか整理できていない」という段階でも大丈夫です。状況を伺ったうえで、進め方をご提案します。


注意

本記事は一般的な情報提供であり、医療行為(診断・治療)や法律上の個別助言を行うものではありません。個別の状況により適切な対応は変わります。

著者情報

回復期病棟で高齢者・認知症診療に従事する医師。生活に直結する意思決定支援の経験を踏まえ、相続・遺言の場面で「意思が表れる条件整理」と「面談整理(紛争予防のための情報整理)」を行う。著者情報はこちら

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