家族の方へ:公正証書遺言のデジタル化で増える“見えない圧”—Web会議で同席圧と伝達条件をどう守るか

2025年10月1日から、公正証書の作成手続がデジタル化し、インターネットによる嘱託やWeb会議(リモート方式)を利用できる場面が出てきます(指定公証人役場など条件あり)。
便利になるのは良いことですが、家族の立場から注意したいのは「手続がオンライン化しても、揉める火種は消えない」という点です。

特に後から問われやすいのは、形式よりも

  • 当日の説明が本人に届いていたか(伝達条件)
  • 本人の言葉が出ていたか
  • 周囲の影響(同席圧)がなかったか
  • どういう手順で確認したか(プロセス)

です。Web会議は便利な一方で、“圧”と“伝わりにくさ”が見えにくくなるというリスクがあります。

※本稿は一般的な情報提供です。医療上の診断・治療、法律上の個別助言や手続き代行を行うものではありません。個別の法律判断は司法書士・弁護士へ、急な意識変化などが疑われる場合は医療機関へご相談ください。


担当医師について(背景)

私は回復期病棟で高齢者診療・認知症診療に従事し、ご本人・ご家族を交えた退院支援の意思決定(自宅/施設等)を日常的に支援しています。
臨床では意思決定は「能力」だけでなく、環境・伝達条件・同席者の影響で大きく変わります。Web会議は環境が変わる分、条件設計の重要性が増します。


1) Web会議で起きやすい“3つの事故”

事故①:本人が聞き取れていないのに進む(伝達条件の事故)

高齢の方は、難聴や集中の途切れがあっても「分からない」と言わずに相づちで進むことがあります。
Web会議では、

  • 音が小さい
  • 話者が切り替わる
  • 画面共有の文字が読めない などで「分かったつもり」が増えがちです。

事故②:画面外の影響が増える(見えない同席圧)

対面だと誰が同席しているか見えます。
Web会議だと、画面外に家族がいる/小声で誘導する、といった“見えない圧”が生まれやすくなります。本人は気を遣って「うん」と言いやすく、後で覆る原因になります。

事故③:短時間で“結論”を迫りやすい

オンラインは「早く終わらせたい」流れになりがちです。
しかし重要なのは、早さより「本人の言葉(理由づけ)が出ること」です。


2) ケース例(匿名の典型):オンラインでは順調、あとで家族が割れる

【状況(典型)】
本人は画面越しに頷き、手続は進んだ。家族は「問題なく終わった」と感じた。
しかし後日、別のきょうだいが「本当に理解していたのか」「誘導があったのでは」と疑い始め、家族内が荒れる。

【ポイント】
揉める原因は「公正証書かどうか」より、

  • 説明が届いていたか
  • 画面外の圧がなかったか
  • どう確認したか
    が説明しづらいことです。

3) Web会議で“揉めにくくする”家族の工夫(実務)

家族が医学的に判定する必要はありません。守るべきは「条件」です。

① 物理環境:一人で参加できる場所を確保する

  • 本人は可能なら一人で参加(同室に家族を置かない)
  • どうしても同席するなら、役割を決める(通訳役・資料係など)

② 伝達条件:聞こえる・読めるを優先する

  • イヤホン/スピーカーの用意
  • 画面の文字は大きく、話すテーマは1つずつ
  • 「分かった?」ではなく「どういう内容だった?」で確認

③ プロセス:その場で結論を迫らない

  • 1回で決めない
  • 「今日は選択肢を並べるだけ」の回を作る
  • 決定事項は1行で残す(後からの解釈割れを防ぐ)

当室が担えること(家族向け)

当室では診断や治療ではなく、紛争予防の観点から 「意思が表れやすい条件整理」と「面談整理(情報整理・文書化)」 を行います。

  • Web会議を含む場面での同席圧・伝達条件の整理
  • 本人の言葉が出やすい進行条件の設計(人数、区切り、理解確認)
  • 後から説明可能な形での整理・文書化(面談整理)

まずは書面での事前スクリーニング(おすすめ)

「まず論点と条件だけ短く整理したい」という場合は、書面完結の事前スクリーニングをご利用いただけます。
(納品:A4 1〜2枚PDF/標準5営業日)

家族の方:お問い合わせ(家族)

ご相談(対面/オンライン)

当方の対応は以下のとおりです。

  • 対面:京都・大阪近辺を中心に対応
  • オンライン:全国対応(内容により)

「まだ遺言内容が固まっていない」「何が不安なのか整理できていない」という段階でも大丈夫です。状況を伺ったうえで、進め方をご提案します。


注意

本記事は一般的な情報提供であり、医療行為(診断・治療)や法律上の個別助言を行うものではありません。個別の状況により適切な対応は変わります。

著者情報

回復期病棟で高齢者・認知症診療に従事する医師。生活に直結する意思決定支援の経験を踏まえ、相続・遺言の場面で「意思が表れる条件整理」と「面談整理(紛争予防のための情報整理)」を行う。著者情報はこちら

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